See more details
Title List

1…69 #2 雪・月・花 (~From.Sweet Drops~ 葉月様)

『69』



あの日、君は旅立った。

右も左もわからぬ異国の地へ。

聞かされたのは、旅立つ1週間前という直前。

なんで僕に黙って決めたんだと、責めた。

君にとって僕はなんなんだ、と。

悲しくて、悔しくて。

僕には隠し事をするなとか言ってたクセに、君はしているじゃないかと。

聞けば、旅立つことはもう半年も前から決まっていたという。

その間ずっと僕に隠していたこととなる。

酷い裏切りだ。

おかげで僕は見送りにも行くことができなかった。

いや、違うか。

行くことができなかったではなく、行かなかった。

了承したつもりはないし、笑顔でお見送りなんか絶対にできないと思ったから。

1日中部屋に籠って、なんで、どうしてとただひたすら心の中でユノを責めていた。

たぶん、子どもだったんだ。

いまもまだ子どもだけど。

それ以上に。

だって、僕は高校生で、君は既に社会人。

大人ぶることはできても、大人にはなれない。

その点、君はやはり大人だったんだな…と、思う。

いまだけではなく、将来も見据えての行動だったのだから。

もちろん、それは後から知ったこと。

しかも君の口から聞くではなく、父から聞いた。

あの時、ホント惨めに思えた。

どうして僕はまだ高校生なんだろう、って。

せめて同い年なら、もう少し違った考え方もできただろうに…。

まぁ、考えたところですでに時遅しってカンジだったけど。

おかげで、旅立った当日に届いたユノからの手紙は10か月も放置されていた。

未開封のまま。

たぶん、ユノはそれを知らない。

知ったらおそらく落ち込むか、拗ねるか、不貞腐れるか…。

大人なクセに、子どもだから。

自分の感情に素直というか、なんというか。

僕と君は、きっと正反対。

数字でいうなら6と9みたいなもの。

だからこそ、惹かれあう。

磁極のように。

腹が立って、何度も忘れようと思ったのに忘れられなかったのがその証拠。

いつだってユノのことを想っていた。

心の中に、まるで君が住みついているかのように。

ユノがいなくなったことで落ち込んだ僕の心。

比例するように成績も悪化した。

受験目前にして。

そんな僕に、父が教えてくれたんだ。

ユノが旅立ったワケを。

「お前は何をしているんだ?」

父に呼び出された書斎。

第一声がそれだった。

怒鳴るわけではなく、悲しそうな声で。

「ユンホ君はなんのためにアメリカへ行ったと思っているんだ?」

そんなこと、知るわけない。

顔を背ければ、深くため息を吐かれた。

呆れたと言わんばかりに。

「ホントに聞いてないのか?」

「…」

「ユンホ君はお前のために行ったんだぞ?」

いったいなんの話だ?

どうしてアメリカへ行くことが僕のためになる?

これからもずっと一緒だと約束をしたばかりだったというのに。

「お前が大学を卒業し、会社に入るとき、自分が支えになりたいからと」

そんなのはユノの勝手だ。

僕が頼んだわけじゃない。

そもそも、僕のためだというなら相談してくれてもよかったじゃないか。

せめて、一言くらい。

「ユンホ君は、お前を愛しているそうだ。支えるのが、他の誰かでは許せないらしい。お前のことをすべて理解するのは自分でありたいと…私に土下座までしたよ」

「え…?」

「どうか、認めてほしいと。お前と、ユンホ君の関係を」

頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。

父さんは、知ってる?

僕とユノの関係を。

しかもそれをユノが自ら話した?

なんで…。

「何度も、何度もね」

そんなこと、知らない。

まさかユノがそんなことをしていたなんて…。

そんな素振り、全然なかった。

気づかなかった。

どうして言ってくれなかったんだろう…。

話すなら話すで、僕だって一緒に頭を下げたのに。

土下座だってしたのに。

知らないところでそんなことされたんじゃ、怒れもしない。

ありがとうだって言えないじゃないか。

「結果、根負けだ。次期経営者となるお前を支えたいのなら、実績を積みなさいと言った。実力勝負のアメリカで、結果を出してみなさいと」

「…」

「彼は、その場で答えをくれたよ。行きます、と。お前といるためならなんでもすると」

なんだよ、それ…。

勝手に物事を決めやがって。

いつだってそうだ。

ユノは、独りで背負いこもうとする。

僕には何もさせてくれない。

なのに、僕には隠し事をするなとか言うんだ。

隠し事をしているのはユノのほうなのに。

「お前との将来を考えているからこそ、ユンホ君はアメリカに行ったんだ」

僕のためじゃない。

そう言うのは簡単だ。

でも、言えない。

心は反発していても、頭の隅っこにいるもう一人の僕が正しい判断だと告げている。

死ぬまでの長い時間を考えるなら、たかだか数年。

どっちを取るかなんて、考えるまでもない。

納得ができないのは、なんの相談もなしに勝手に決めたこと。

それだけがどうにも許せない。

「そんなユンホ君の気持ちを、お前は踏みにじっているようなものなんだぞ?」

踏みにじられているのはこっちだ。

とはいえ、説明を聞かなかったのは僕。

感情に任せて怒鳴り、意図的に連絡を絶った。

もしかしたらユノはちゃんと説明してくれるつもりだったのかもしれない。

それを無碍にしたのは僕のせいだ。

「ちゃんと考えなさい。これからどうするべきなのか。お前の人生なのだから」

正直、人生なんてわからない。

この先どうするのかも。

わかっているのは、父の会社を継ぐことだけ。

僕の人生なんて言うけど、きっちりレールは敷かれている。

その上を僕は歩いていくしかない。

問題は、ひとりで行くか、ふたりで行くかということ。

「…」

考えるまでもないな。

そりゃ怒りはあるし、責め立てたい気持ちもある。

でも、やはり僕はユノと一緒にいたい。

なんだかんだ、好きなんだ。

どれだけ腹が立っても。

ホント、どこがいいんだろう…。

片付けはできない、料理もできない。

できることは愛想を振りまくことだけ。

完全なる八方美人。

嫌いなところなら山ほど挙げられる。

でも…なんでだろう?

嫌いになれない。

なにをしても、どう考えても。

いつだって僕の隣にはユノがいるんだ。

どんな未来を想像しても。

出した答えは、待つしかないということ。

でも、いつまで…?

期限もなく、待つのは辛い。

その時、ふとあの手紙のことを思い出した。

捨ててしまおうと何度も思い、そのたびに思いとどまった手紙。

旅立ちの日、ユノが僕へと託したその手紙を。

いまさらとは思ったけど、唯一、それが僕とユノを繋ぐもの。

手を伸ばし、机の引き出しへと手をかけた。

目に入らぬよう、奥底に仕舞い込んだその手紙。

白い封筒に浮かぶ見慣れた文字。

チャンミンへと書かれたその封筒をそっと開封し、中に仕舞い込まれていた便箋を取り出した。

書いてあったのは、謝罪の言葉。

勝手に渡米することを決めて、申し訳なかったと。

そして、先日父さんから聞いた内容が、ユノの言葉で綴られていた。

ここでもやはり、”ゴメン”って謝ってる。

だって、すべてユノが勝手に決めたこと。

僕たちふたりのことなのに、なんの相談もなく。

だから、”ゴメン”という言葉は正しい。

でも、どうしてだろう…。

少し寂しくなった。

妙にユノが大人びて見えて。

僕ひとりが、子どものまま置き去りにされているように思えて。

文字が、涙で滲んでいく。

抜いても、拭いても、次から次に溢れていく。

そんなに泣き虫ではなかったはずなのに。

最後には、こう書かれていた。

2年間、待っていてほしい。

必ず迎えに行く、と。

愛している、と。

まるで心を直接鷲掴まれているみたいに苦しくなったのを、いまでも覚えている。

でも、詳しい日付は書かれていなくて。

2年なんてまだ全然先のことなのに、来る日も来る日も待ちぼうけ。

指定された、この場所で。

いまさら連絡もできないし…。

だから僕は、ここでユノの帰りを待つしかなかったんだ。










つづきはこちら→#3
--------
今回はお忙しい中ご協力ありがとうございました!!
素敵な葉月さんのブログはこちら→雪・月・花 ~From.Sweet Drops~(葉月様) 







<*ランキング*参加中。
↓ミンホミンホ!ポチっと押して応援宜しくお願い致しますm(_ _)m

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
*Esperanza*チカ*presents
関連記事

COMMENT

POST COMMENT

(設定しておくと後でPC版から編集できます)
非公開コメント