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1…69 #3 雪・月・花 (~From.Sweet Drops~ 葉月様)

『69』


頭は真っ白のまま。

でも、とりあえず質問は理解できた。

たぶん。

「えっと…」

しかし、理解はできてもどれも直っていない。

チャンミンに散々言われたのに、だ。

向こうの家を引き払うときも、ゴミを出すのが一番大変だった。

ペットボトルとか、カップラーメンの空容器とか。

送る荷物よりも捨てるものの方が多いくらい。

でも、それがなんだって?

オレは、ふたりで暮らす家を探しに行こうと誘ったワケなんだけど、その問いかけはどこに行った?

まさかチャンミンはもう…。

いやいや、でもさっきキスしてくれたし。

手、繋いでくれてるし。

大丈夫、だよな…?

「チャ、チャンミン…。あの…」

もしかして、まだ怒ってるのかな…?

オレが勝手に決めて、アメリカ行っちゃったこと。

確かに、一度も連絡くれなかったし、手紙もくれなかった。

そりゃ勝手に決めたことはわるかったけど、でもチャンミンなら理解してくれるはず。

そう信じたいけど…。

「なんか、怒ってる…?」

「そりゃ怒ってますよ。僕たちのことを勝手に決めて、勝手にアメリカ行っちゃうんですから」

「そ、それは、その…」

「しかも、僕に何にも言わず父さんに暴露するなんて。反対されたら、どういうつもりだったんです?」

なんにも言えねぇ…。

だって、チャンミンの言うとおりだもんな。

「ゴメン…」

「次はないですからね」

「え?」

「次はないって言ったんです。返事」

「は、はい!」

なんか、拍車かかってる…。

昔からなんていうか…歳の割にしっかりしてるっていうか、偉そうっていうか、そういう気はあった。

「ここです」

「へ?」

「ここに住んでください」

「…」

目の前には高層マンション。

しかも新しくて、高そうなカンジ。

いったい、いくらするんだ?

「返事」

「はいっ」

怖い…。

嫌だって言ったら、それこそこてんぱんに言い負かされそうな。

だってオレ、口じゃチャンミンに勝ったことない。

力勝負では負けないけど。

「これがカギ。1507号室です。じゃあ」

「え!?あ、ちょ…っ、チャンミン!」

「なんです?」

「どこ行くんだよっ」

「仕事に決まってるでしょう」

「は!?」

仕事?

だって、まだ大学生だろ?

バイトでもしてる?

いやいや、チャンミンにバイトなんて必要ないはず。

「ま、待てっ!オレも行く」

「いいからおとなしく部屋で待っててください」

「嫌だ」

冗談じゃない。

チャンミンのことで知らないことがあるなんて。

そりゃ2年間も連絡取ってなかったんだからそういうことだってあるかもしれないけど…。

でも、知りたい。

チャンミンのことならなんでも。

さっさと去ろうとするチャンミンを追いかけていく。

振り返ろうともしない。

絶対、まだ怒ってるよ…。

せっかく帰ってきたのに。

また、あのころと同じようにふたりでやっていけると思ったのに。

オレの考えが甘かったのか?

けど、そんなことで諦めるつもりはない。

チャンミンと一緒の道を歩くために頑張ってきたんだから。

死ぬ気で。

必死に追いかけてたどり着いたのは、チャンミンの父が経営する会社。

いったい何がどうなってるんだ?

「おはようございます」

受付の人はすでにチャンミンを認識しているみたいで、立ち上がって深く一礼。

チャンミンもまた気にする様子はなく、ほぼ素通り。

エレベーター前で立ち止まり、ちらりとオレを振り返った。

「ついてきてどうするんです?」

「どうするって…」

そんなこと、なんにも考えてない。

ただ、チャンミンがどこへ行くのか気になった。

仕事がなんなのかも。

「大学行きながら仕事を手伝っているんです」

「え?」

「早いに越したことはないでしょう?仕事を覚えるの」

「だからって早すぎだろ…」

オレが教えてやるつもりだったんだ。

2年間アメリカで頑張って、さらに2年間でこっちの仕事を覚えて。

だって、同じ会社とはいえちょっとやり方違うし。

なのに…。

「ユノに教わるのは癪なんで」

「は?」

「半分冗談です」

つまり本気ってことか…。

オレに教わるのが嫌だったってこと?

大学生なんだから、大学生らしくしていればいいのに。

だって、自由にできる最後のチャンスだぞ?

卒業して、社会人になったら自分の時間なんかほとんど取れない。

もっと遊んでおけばよかったって、いまだに思うくらい。

その権利を放棄してまで仕事?

相変わらず何考えているかわかんねぇ…。

でも…。

もしかして、って思い当たるところはある。

なにしろ、チャンミンは筋金入りの負けず嫌い。

オレに負けるのが嫌だったのかな、って。

もちろん、仕事だから勝ち負けとか関係ないんだけど。

社会人ってのは基本的に、年長者から順番になっていくものだし。

「ユンホ君」

ふと、そんな声が聞こえた。

振り返れば、笑顔を浮かべながらも足早に歩み寄ってくるおじさんの姿。

「おじさん!お久しぶりです」

「ホント久しぶりだね。アメリカはどうだった?」

「いい経験になりました。その経験をこちらで活かせればと思っています」

「そうか、そうか。いろいろ話をしたいんだが、今夜うちに来ないか?よければ一緒に食事でも」

「はい、ぜひ」

なんて会話をしていたら、エレベーターの扉が閉まるところだった。

「ちょ…っ!」

慌てて腕をねじ込み、扉を押し広げる。

もちろん、自動的に感知して広がってくれただけなんだけど。

「置いてくなよっ」

「お父さんと話したいならごゆっくり」

「え…?」

また、目の前で扉が閉まっていく。

それもまた間一髪のところでこじ開けた。

「なに怒ってんだよ」

「怒ってません」

「怒ってるだろっ」

オレにはわかる。

基本的にポーカーフェイスだからわかりづらいけど、オレには。

ただ、問題なのは理由がわからないということ。

「なんで怒ってんだ?」

「だから怒っていませんって。しつこいですよ」

しつこい…。

なんか、口の悪さに拍車がかかっているというかなんというか…。

昔はもうちょっと可愛げがあったのに。

「大人になったと思ったが、まだまだ子どもだな。チャンミンは」

「…」

なんか、いまの口ぶりからすると、おじさんはわかってるカンジ?

チャンミンが怒っている理由。

「食事はまたの機会になりそうだな」

なんて苦笑いで呟く。

なんで?

別に今日だってオレは構わない。

だって、ずっと飛行機の中で寝倒してたし。

疲れてなんかいないぞ?

「ユンホ君、行かなくていいのか?」

「え?あーっ!チャ、チャンミンっ!」

気づけば、チャンミンはエレベーターの向こう。

またもやひとりですたすたと歩きだしてしまっている。

酷い…。

酷すぎる。

置いてくなって言ってんのに…。

いったいオレが何をしたって言うんだ?

もちろん2年前のことは完全にオレが悪いわけで、怒られても仕方ないけど。

でも、やっぱりヘコむ。









つづきはこちら→#4
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