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9…夜を超える(Sweet Misery tomato-mato様)

ーーー春来りなば、君帰らん

白々とした明け方の空に春の訪れを予感して、チャンミンは思った。

ーーーまあ、僕はまだ帰れないんだけどね




「あ、きょうはユンホ兄さんと会うんだ」
「え」

出がけにすれ違ったドンへからふいに言われて、チャンミンは思わず足を止めた。

「え、ドンへ兄さん、どうしてわかったの?」

きょとんとするチャンミンの胸に、ドンへは笑いながら顔を近づけて鼻をくんくんさせた。

「いい匂いがする」
「あ、」
「この匂いがするときは、ユンホ兄さんと会うときだろ?」

図星を突かれて、チャンミンは返す言葉に詰まった。警察の宿舎に入るとき、小さな小瓶に移し替え、お気に入りのアクセサリーと一緒に持ち込んだ香水。
日本のファンクラブで香り当てクイズに挑戦したときに、ユンホが気に入った香りだった。

ーーーこれ買って、いつもつけて

本気かどうかも分からない、調子の良いユンホの言葉を、その場は「自分で買ってください」と受け流したチャンミンだったが、あとでこっそりスタッフから譲ってもらっていたのだった。


「ユンホ兄さんが好きそうな匂いだなあ」
「これは、あの、日本のファンクラブの撮影で使って、それで、捨てるっていうから、もったいないから」
「分かった、分かった」
ドンへはひらひらと手を振って、「ユンホ兄さんによろしくな」と言い残して部屋に戻っていった。


浮き足立った気持ちを見透かされたようで気恥ずかしく、ほんのり熱を持った自分の耳を、チャンミンはきゅっと握った。

ーーーチャンミン、耳が赤くなってるよ

ユンホの声と触れる手の感触が蘇り、チャンミンの耳はますます熱を増す。ユンホの身体が彼のものであると同時に、彼の身体もまた、ユンホのものだった。なにげない瞬間にふいに半身を求めて疼きだし、それはいつでもチャンミンをいたたまれない気持ちにさせた。思いを振り切るように、チャンミンはコートの裾を翻して宿舎の外に飛び出した。



事務所に着くと、ユンホが会議室で待っていた。
会議机の上には後輩グループのCDやブロマイドが積み上げられている。さらにその脇には大きな紙袋。人気のスイーツショップのロゴが目に留まり、「どうしたの、それ」とチャンミンは尋ねた。

「後輩たちに。たくさんサインしてもらったから」
「また頼まれたの?」
「駆け込み需要がすごくて」

そう言って、ユンホはあははと笑った。

転役の日が近づき、ユンホのもとには上官や部下たちから「誰それのサインをもらってきてほしい」などのお願いが大量に届いていた。そのため休暇ともなれば、たくさんのCDやブロマイドを持って事務所を訪れて、後輩たちにサインをもらうのが恒例となっていた。

CDやブロマイドはユンホの自腹である。その上、後輩たちへのお礼として、ユンホは毎回、人気のスイーツなどの手土産を律儀に用意していた。自分なら面倒臭くて嫌になりそうだとチャンミンは思う。

「大変だねえ」
「うん、まあでも、喜んでもらえるし……それに断るわけにも」
「まあ、そうだね」

兵役中は常に監視されているようなものだ。軽はずみな言動が、後でどんな尾ひれ背びれをつけて拡散されるか分かったものではなかった。

チャンミンはユンホの隣に腰を下ろし、「お疲れさま」と言葉をかける代わりに、とん、ともたれかかった。

「あ、いい匂い」
「そう?」

ユンホはすうーっと大げさな身振りで深呼吸をし、「なんだか元気がでた」と言った。

「じゃあ、この香水、あげるよ」

揶揄うようにチャンミンが言うと、ユンホは「ダメ、ダメ。ちがう、ちがう」と首を振り、おもむろにチャンミンの頭に顔を寄せた。ふんふんと匂いを嗅ぎながら「いい匂い」と呟く。その瞬間、チャンミンの鼻腔にもユンホの体臭がふわりと届き、身体の奥がぞわり、と蠢いた。

「……ユノはもう用事は終わったの?」
「終わったよ」
「じゃあさ、もう帰ろ」
「チャンミンはもういいの?」
「うん」

暫しの沈黙の後、ユンホが「じゃあ、帰ろう」と呟いた。その響きにチャンミンは、ユンホも自分と同じように感じていることを察した。




ユンホの部屋に到着し、玄関の鍵を締めるなり、チャンミンはさっそくユンホに抱きついて口付けた。ふっくらとした唇の感触を何度も何度も確かめながら、リビングに移動する。

ソファーに向かい合って座り、チャンミンは愛おしそうに、すこし伸びてきたユンホの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「この髪型も見納めかな」

次に会えるのは、転役後だった。

ユンホは「そんなに早くは伸びないよ」と微笑んで、チャンミンの頬にキスした。その口をチャンミンがすぐに攫い、吐息さえも逃さないというように、口腔を深く犯す。ゆっくりと押し倒し、シャツの裾から手を差し入れて、ふっくらとした胸をやわやわと揉みしだいた。親指で胸の先をいじると、吐息に甘い喘ぎが混じり始める。

すでにお互いのものは硬く張り詰めていて、焦らしあう余裕はなかった。ガチャガチャとベルトを外しあってズボンのジッパーを下げ、もどかしく下着を退けると、すっかり立ち上がったものがぷるりと顔を出した。

「一回、出していい?」

チャンミンが尋ねると、ユンホはこくりと頷いて、すぐにチャンミンのものを咥えた。自分のものが小さな口をみっちりと埋め尽くす快感に、チャンミンの腰はぶるりと震えた。きつく吸われ、裏の筋を舌でざりざりと刺激されると、すぐに達してしまいそうになる。腰をゆるゆると前後に動かし奥をつつくと、ユンホの喉がきゅっと締まって、快感がさらに高まった。

「ねえ、いい?」
「いけよ」

咥えられたまま上目遣いで煽られて、チャンミンはユンホの頭を押さえて腰を強く動かし始めた。たちまちに限界を迎え、ユンホの口の中で達する。びくびくと震えながら吐き出されたものは、そのままユンホの喉奥へと流れていった。

濡れて光るユンホの唇に、チャンミンはちゅ、と口付けた。ユンホの甘い唾液に自分の味が混ざり合い、いつもすこし複雑な気持ちになる瞬間だった。

態勢を整えて、今度はユンホの後ろをほぐし始めた。最初にくらべてかなりほぐれやすくなっていたが、前回からしばらく経過していたので、チャンミンは丁寧に指を動かし、少しずつ広げていった。

気持ちよいところを刺激されるたびに、ユンホは「あ、あ、」と喘いで、内股を震わせた。まだ一度も出してないユンホのものは、硬くそそりたち、先端からは先走りが溢れていた。

「チャンミン、俺、もう……」
「ユノも一回、出しておく?」

チャンミンの問いに、ユンホはがくがくと首を縦に振った。中で蠢くチャンミンの指をきゅうきゅうと締め上げる。

チャンミンは指をすっと抜き、代わりに己のものを押し当てた。こちらもすでに硬く立ち上がっていた。十分にほぐれた口から、ぐいと挿入する。ユンホが感じるところをぐりぐりと執拗に攻めると、ほどなくユンホが「…あ!」と叫んで達した。

締め付けになんとか耐え、チャンミンは腰を小刻みに動かしながら、いったばかりで敏感なユンホの陰嚢をやわやわと揉みしだいた。ユンホは「あ、あ、あ、」と喘いで、チャンミンの動きに合わせて腰をグラインドさせる。あまりの気持ちよさに、チャンミンは目の前がチカチカした。

「ユノ、気持ちいい。すごい気持ちいい」
「俺も、俺も気持ちいい」

我慢も限界に近づき、チャンミンは腰の動きを早めた。いく寸前に動きを止めてずるりと引き抜くと、今度はユンホを仰向けにひっくり返して、再びずん、と挿入した。予想外のタイミングに、ユンホが「ん、」と呻く。頬を桃色に染め、とろんとした顔で放心するユンホの唇に、チャンミンはむしゃぶりついた。そのまま腰をピストンのように激しく動かし始めた。





はあはあと息を整えながら、ソファの上にごろりと横になる。離れた身体が寂しくて、チャンミンはユンホの脚に自らの脚を絡めた。ぴたりと寄り添って、上下するユンホの胸をじっと見つめる。

ユンホがそっと腕を回し、チャンミンの頭を撫でた。

「チャンミン、なにかあった?」
「……なにもないよ。なんで?」
「いや、なんとなくだけど……」

ユンホは深くは追求せず、ゆっくりとチャンミンの頭を撫で続けた。やがて、チャンミンが躊躇いがちに「ユノはさ……」と口を開いた。

「怖くないの?」
「ん?」
「僕は怖い。兵役に入る前より怖い」
「……戻るのが?」
「未来が。続いていく日常が」

これまで2人は、望もうと望まざるとに関わらず、常に試練を与えられ続けて来た。目の前の山を乗り越えて、乗り越えて……だから、試練は怖くなかった。ユンホと2人でまた乗り越えられる自信があった。

しかし、いま、兵役による活動休止という大きな山が通り過ぎようというときに、ふと不安に襲われたのだった。そもそも彼は、こんなに長く、人気を保ったまま活動を続けていられるなどとは思っていなかったのだ。

「いつか、傲慢になって、なにもかもがマンネリになって、ウンザリされて、うまくいかなくなって……」

ネガティブな言葉を吐き出し続けるチャンミンに、ユンホはふう、とため息をついた。腕を回して、ぎゅっとチャンミンの頭を抱え込む。

「チャンミンは心配性だなあ」
「……どうせ僕は心配性です」
「あはは。でもさ、俺も怖いよ」
「ユノも……?」
「そりゃそうだよ。いつまで踊れるだろうとか、いつかステージに立てなくなる日が来るのかなとか……あと、そう、いつまでチャンミンはそばにいてくれるのかな、とか」
「なにそれ」
「ほんとだよ」

暗い深海を思わせるユンホの声に、チャンミンは絡める脚に力を込めた。

「チャンミンといっしょなら、俺はどこまでもいける。日常だって超えていける」
「……」
「忘れないで。あのとき、俺に再び光をくれたのはチャンミンなんだ」
「……うん」

それから2人は触れるような口付けをして、ぴたりとひとつにくっつきあった。とくん、とくんと鼓動が時を刻む。こうして超えてきたいくつもの夜を思い出しながら、2人は深く深く、まどろみに沈んでいった。














おしまい
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