See more details
Title List

5…Momo in the rye #2 (王ロバ2 teftef様)

北米だけで書類選考に30,000人が応募し、3次まであったニューヨークオーディション通過の10人に残ったあと、書類関係は翻訳ソフトと首っ引きで募集要項を埋めて、親から入金のメール連絡があった30分後には銀行から金を下ろしてその金をつかんで空港に行き、俺は飛行機に飛び乗った。
世界中からソウルに集まった100人がさらに10人に絞られ、作曲志望は俺だけだった。

才能を指導するっていっても限りがある、あくまでチャンスが与えられるだけ、ここに集まれたきみはエリートなんだよ、と入学式でえらいひとが言ってたけど、ぜんぜん信じることができなかった。
俺はほんとうに、音楽の才能があって、受かったのか。
オーディションを受けるうち、選ばれていくうち、自信を持っていくまわりのやつらの様子とは反対に、俺は怖くなった。



俺は知らないでいることで、いろんなことを乗りきってきたような気がしていた。

母親について、俺は幼い頃からよく引っ越した。
母は他の子と違って父親が家にいない事情をちゃんと説明してくれたことはない。
アルバムに俺と、母親の写真しかないのはなんでなのか。
父親はだれなのか。
母親はほんとうは俺を産みたかったのか。
俺は邪魔だったのではなかったか。
ベタベタと俺をかまう時と、急に夜帰ってこないこともある母親に捨てられるのが怖くて、いつも、ギリギリのところで目をそらして、本当のことをたださずに、そっと。

こっちに来てから英語しかほとんどできないのがバレて、それでもなんとかなってるのは、作曲部門の応募だったからだとあとで先生に言われて(多分、先生がかばってくれてもいる)それでもうちに所属してるアーティストの名前くらいは覚えておけよ、と言われて、そこだけはネットで調べた。

すごく気になることがあったから。

TVXQ、SHINEE、SUPERJUNIOR、名前を聞いたことはあったけど、いわゆるアイドルだと思って、興味を持ったことはなかった。まさか、自分がその事務所に所属しようとするなんて、養成学校に通うことになるなんて思わなかった。俺はそういうものに一番遠い人間だと思っていた。
事務所のサイトのトップを飾るアーティストたちの画像を見た。
夢のようなステージの動画を見つめ続けることは、つらくて、このひとたちと同じ場所に自分が立てるようになるとクラスメートたちのように無邪気に信じることは無理だった。

たまたま、限定的な条件の中で選択肢がなくて選んだのだと思っていたから、うまく今の状況を抜け出せたら、とにかく大人になれば食えるようになれば、親の庇護を受けなくても生きていける。学校は、そこまでの手段だと思っていた。あんまり、知らない方がいい。

そりゃあ、自分の音楽を買ってくれる人がいて、それで食べていけたら、最高だけど。

こんなひとたちは、すごいラッキーな人たちなんだろう。
才能もあった、幸運もあった。
画面を指でなぞった。
俺なんて、おみそもいいとこなんだ、


誰にも言えないけど、
オーディションで、どんなことを言われたか何て友達に言えない。
俺は、ズルをしてるのかもしれない。

だから、ぜんぜんステップも覚えられないダンスレッスンも奨学金をもらうために通ってる。後ろの方で目立たないように先生と目が合わないように踊ってる。

突然、お前なんかここにいる資格ないんだって、告げにくる大人に肩を捕まれないように。







拍手がぱらぱらとおこって、次第に手拍子のようになっていき、
「ユーノ!、ユーノ!」
それほど高くない天井にわんわん歓声が沸き起こり、圧倒される。
「ユノはアカデミーの連中の人気者なんだ」
サンフン先生が誇らしげに言った。
仕事が忙しい間でも、しょっちゅうレッスンに顔を見せるしな、声をかけてくれるから、

「兵役に行ってさ、こんなに評判がよくなって帰ってきた芸能人も珍しいんだよ」
アイドルに興味を持たない層にファンを増やしにいったようなもんだったなあ。

ちょっとみんな道開けて、とスタッフが声を張り上げて、
ヨンミン代表だと、耳打ちされて、入学式にお祝いの言葉をくれた、事務所の偉い人が上機嫌で周りの生徒たちと気さくに大口を開けて笑っているのを見つける。

今日は別に練習生に会いに来た訳じゃなくて、ユノはお偉方と会いにきたんだろうけど、こんな騒ぎになって、待ってられなくて降りてきたんだな、とサンフン先生が耳打ちしてくる。


「みんな、待ってたんだ。」

サンフン先生の声音にいつもと違う色を感じて、振り返った。
俺の視線に照れたようにサンフン先生が入り口の方に目をそらし、顎をしゃくった。

「あいつが無事帰ってくるのを、みんな待ってたんだ。」






強烈に羨ましかった。
こんなふうに求められるなんて、
どんな男なんだろう?

「ユノ!」
サンフンさんが叫び、
人垣のすぐむこうに彼がいるようだった。

「ユノさん、握手してください、」
「ヒョン、」
「おかえりなさい。」


「おい、おい、アカデミー代表」
どこいった、ナヨン!

あれ?
さっきまで固い顔で固まってたナヨンさんの姿がなく、見回すと俺の背中に小さいのが隠れるようにくっついていて、
いつものずぶとい様子を返上して、花束抱きつぶさんばかりにブルブル震えてる。
「無理、無理、あたし無理、」
「なにいってンだよ、」
「モモ、おねがい!」
花束を押し付けられた俺は押し出されて、気づくと、ユノユノの前に立っていた。

黒いキャップを目深にかぶって、真っ白な小さい、片手でつかめそうな人形めいた端正な顔がゆっくりと振り向き、奥二重の黒目がこちらに視線を向けると、心臓をひっつかまれた。

両目が見開かれて、ああ、彼が?と俺の横にいるサンフン先生に話しかける。



いやだった、
だから急いで、ナヨンに押し付けられた花束を目の前の、きらきらした男の体にぶつけるように渡して、
「おかえりなさい!」と叫んだ。

あとでちょっと離れたところにいたらしいジェウオン先生に
「あんなでっかい声、お前が出せると思わなかった」と言われたくらいの大声は彼もびっくりさせていた。



「…ありがとう」
きれいな三日月型にたわめられたユノさんの瞳から目を離せなくて、逃げ出したかったはずの俺はつったたまま、身動きできない。

後ろから恐ろしいような力でナヨンさんにしがみつかれていたせいもあったけど。ナヨンさんは、その想像以上にきれいだけど、同時にフレンドリーでもあるトップアーティストの笑顔を俺の脇の間から見つめながら、
「29期生キムナヨンです」
突然はきはきとしゃべりだし、
「東方神起に憧れてオーディション受けました、兵役ご苦労様です」
「ありがとう、ちょくちょく顔を出すから、また話を聞かせてください」
ユノさんの瞳がこちらに向けられて、心臓が喉元まで上がってきたかと思った。
「きみは?」
「ク、クン・モモです」

な、似てるだろ?
と横から口を挟んだのはサンフン先生だろう。


彼だけには言われたくない、
嫌だ、

思わず目を伏せた俺の頭の上を

「ぜんぜん似てないじゃないか。」

まわりがどっと笑った。

「ええ?そっくりだろ、若いときのチャンミンにそっくり」
サンフン先生が言って、
「似てないよ、」
にっこりまたユノさんが笑って、
「な?」

俺の頭を撫でようと、
背が高いんだなあ、と手を伸ばして、あたたかい手で。
そのあと、両手で俺の両肩をつかんで、ぎゅっぎゅっとして、
すごく力が強い。

「彼は彼で、チャンミンには似てないよ。」
でも、名前がモモ、っていうのはびっくりだな。

とくしゃっと笑って、俺の顔をのぞきこんで、
ほんと最近のこはみんな背が高い、と言いながらようやく俺の花束を受け取った。上にこの人を引っ張ってこうと待っているスタッフを待たせて、俺と話してくれてるのだとわかった。

「だろ?こいつ、フランス人とのハーフなんだって」
「そうなんだ、じゃあ、作詞をフランス語でもやれるね」
どきっとした。

俺が楽曲制作で入ったって知ってるんだ。




シムチャンミンに似てないって。

似てないって。



すいません、と後ろからカメラを持った事務局のひとに声をかけられ、写真とらしてください、と言われたけど、他のスタッフが重ねて、上待ってるから、早く、と声をかけてきて、
ごめんね、またあとで、とサンフン先生と握手して、げんこつ合わせて、あーはーはーって、笑い声だけ残ってく男の背中がまた人波に揉まれて連れ去られていくのを呆然と見送った。

彼がスーツ姿の事務所の人に連れられて、上の階に移動してしまうと廊下を埋め尽くしていた人間はみんな、気が抜けたような様子でざわめきながら移動し始めた。

「今日はこのあとユノのおかえりなさい会があるんだ、おまえもくるか、」
とまで話して、俺の顔を見た先生がなんでか笑って、
髪をくしゃくしゃにされて、
うつむいたら、どん、と後ろから人がぶつかった。

先生、僕いきたいです、と真っ赤に染められたふわっふわの髪の子が先生と俺の間に割り込んできた。自己紹介の時に、目標はTVXQですと言っていたやつで、
「そうだな、来れるやつは顔を出せ、」
サンフン先生がうなずくと、まわりの生徒たちの歓声が上がって、つったっていた俺はどんどん押し出されて、じりじりと後ろずさって、その俺に気づいた先生が俺に
「おい、モモ」
と声をかけてくれているのに気づいてたけど、くるっとふりむいた赤い髪が睨み付けてきてるのから逃げるように、俺はその場を離れた。元々の用事を思い出し、コンビニに行こうと外に出ようとしたら、事務局の人がユノユノの出待ちがいて騒動になるから、裏口回ってくれ、って言われて、あきらめて、スタジオに戻った。
午後からは使えないって言ってたけど、あの調子じゃ誰も今日はここに来ないだろう。

飲み会なんて、しゃべれないし、のこのこ顔を出しても恥かくだけだ、金もないし、
うまくやれる気がしない、

そんなことより、






彼が言ってくれた言葉をひとりでゆっくり、味わいたかった。



似てないって、

一番そばにいたはずの彼が、似てないって。

俺は今はいない、シムチャンミンの代わりじゃないって。










つづきはこちら→#3
--------
今回はお忙しい中ご協力ありがとうございました!!
素敵なteftefさんのブログはこちら→王ロバ2(teftef様)







<*ランキング*参加中。
↓ミンホミンホ!ポチっと押して応援宜しくお願い致しますm(_ _)m

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
*Esperanza*チカ*presents
関連記事

COMMENT

POST COMMENT

(設定しておくと後でPC版から編集できます)
非公開コメント