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5…Momo in the rye #7 (王ロバ2 teftef様)

「つまり、サリンジャーじゃなくて、コクトーだったって話。」

久しぶりの休日、ジョウオニヒョンにビールみたいなアイスエスプレッソを出すというカフェに連れてこられて、今浦島な俺はすっかりおのぼりさん気分で回りを見回しながら、

え、ああ、

恐るべき子供たちと言いたいんだろうが、あのモモを果たして子供といっていいんだろうか、と詳しく話すとやぶ蛇なあの夜の顛末が頭を過り、恐ろしく察しのいいこの人にこれ以上把握されたくなくて、俺はむにゃむにゃとそうですねとかなんとか、言葉を濁して、これ、上手いですね、と呟くと、
「へえ、ユノヤがコーヒーを上手い、だって、へえ!」
とニヤニヤされて、「それはあれか、あのスーパーお助けマンの弟が、コーヒー好きだからとか」って、
この人どこまで知ってるんだ。

「アッチにいる間、飲めなかったから、好きになったんですよ、飲めないとなると、飲みたくなるものでしょう。」
「うんうん、」
「そうだよな、いつもそばにいる人間も、離れてみるとさ、て、またなんか、」

この人の手管にのっかって余計なことを言ってしまうのはまずい。
一応表沙汰になっているのは、公園で野宿しているモモを俺が保護して、翌日事務所に一緒に行って、口添えした、というところまでで、
チャンミンまでなぜか付き添ってたとかはオフレコだ。

俺がうんともすんとも言わなくなったのを見てとったジェウオンさんは、からかうだけからかって気がすんだのか、俺が一番聞きたかった、モモの最近の状態を問わず語りに聞かせてくれた。

だって、行き掛かり上、やっぱり、心配だから。



事務局がふてくされるモモから聞き出した本当の連絡先、フランスのご両親宅に電話をすると、全てがわかった。モモはニューヨークの高校を勝手に自主退学して、家出同然の状態で、こっちに来ていたのだそうだ(嘘の連絡先はちなみに、ニューヨーク時代のアルバイト先の先輩に頼んで借りた番号だった)。

親御さんはモモの最小限の説明だけでは詳しいことがわからないまま、連絡がつかなくなるよりはと言われるがまま送金していたらしく、ネットでどうやらモモのいっている学校はここらしいとあたりをつけて、訪韓を予定していたところで、事務局からの電話に母親は絶句したそうだ。
悪い想像ばかりしていたからよかった、主人と相談してなるべくはやくそちらに伺いますと声を震わせていたとか。
それで、来週には両親共々こっちに来て、正式に契約を結び、もちろん宿舎などは用意され、残りの高校の学位も取れるようにといろいろ手配が進むことになり。

事務局側の言い訳としては、書類は全部渡してあったし、親は海外で、こっちに親戚がいる様子もないし、サインを早く貰いたかったから説明しようとしても逃げ回られて、とりあえず毎日学校来てるし、若干後回しになっていた、てそれがダメなんだろ。




まあ、とにかく、よかったなあ。

しょうのない悪たれだけど、
才能はあるらしいし、

まあ、同じ事務所所属になっちゃあ避け続けるわけにもいかないし、
正直、怒りとかは特に感じてないと言ったらまずいのかもしれないけど、

困惑だけというか、
ありゃなんだったんだ、というか、

次に会った時にどんな顔すりゃいいのか、そこは途方にくれるけど、

なんだろうな、

まあ。

なんとかなるだろ。



「しかし、あいつ、偉いとこに手え出すなあ、」
と俺の顔をじろじろ見て、
「まあ若者は惑わされるか、つやっつやだもんなあ、」
帰ってきた早々これか、
ユノユノのひとたらしは相変わらず、
いや、パワーアップしてんじゃないの、

話が振り出しに戻った感じで、
「なんの話ですか、僕は何も」
言いかけて、
両肩を強い力で後ろから押さえつけられて、飛び上がる。

振りかえると、
「おまたせです」
待ってないし、チャンミン、おまえ、警官の制服のままで、こんなとこ、いいのか。

あの夜、チャンミンを巻き込みたくなかった俺が今日はひとまず帰れ、と言っても、チャンミンはけして頷かなかった。

この男を今、外に放り出せるんですか、出せないでしょ、ユノとこいつ、二人きりにできるわけないでしょう。

ホドンさんの飲み会に、サプライズゲストとして実は招かれていたチャンミンは、その日イベントが昼間に入っていたのを無理やり休暇を取って、案の定仕事が終わらず、せめて俺の顔を見ようとマンションに立ち寄ってくれたらしかった。

チャンミンに腹を蹴られて吹っ飛ばされたモモは、鋭い目でねめつけている、自分にそっくりな警察の制服の男に早く服を着ろとさらに蹴飛ばされ、相当驚いたろう。
目を白黒させてるモモに思わず、声をかけようとした俺に、
まさか、可哀想とか思ってないですよね、ユノ、
とチャンミンが言って、
チャンミンに、鍵のかかる客室で今夜は寝ろと布団と一緒に押し込まれても、モモは抵抗しなかった。




「じゃあ、ジェウオニヒョン、このひと送ってきますから」
と言いながら、俺の荷物を抱えて店の外に歩きだし、
がんばれよお、
とのんきな声で見送るジェウオンさんに、頭を下げて、店の外に出ると、
チャンミンは目の前に停めたボルボの(路駐か)後部席に荷物を積みこみ済みで、
はい乗ってください、と手招きされて、いろいろ言いたいことはあったが、回りの視線も感じるし、サジン撮りまくられてるし(東方神起がふたりそろってる!)、はやいとここの場を退散したい一心で、助手席に乗り込む。

車は滑るように静かに走り出す。実はチャンミンの運転する車に乗せてもらうこと自体が珍しくて、なんか落ち着かない。

「ユノ、俺、今日で外泊休暇、最後だから。」
「お、おお」
「ユノも今日は休みでしょ、予定ないよね、マネヒョンに聞いた、」
「うん、なあチャンミン」
「はい」
「今日は、その、」
「はい、ユノが食べたがってた店のキンパ買ってしました、デリも、サラダもあるし、」
「...悪いな」
「俺も食べたかったんで、気にしないでください」

沈黙が落ちる。

チャンミンは結局外泊になってしまったあの日、ほとんど使ってなかったらしい外泊休暇を一泊取り、一旦帰っていって、
毎日のように義務警察寮から電話をしてきて(声が聞きたかったんです)、
2日前からまた外泊休暇を取り直し、昨日はスタジオまで迎えに来た。

マネヒョンに、マネージャー要らないなとからかわれ、転職しようかなと真顔でチャンミンに返されて、俺の乾いた笑いがむなしくスタジオに響いた。

昨日のパターンでいけば、このままうちにきて、チャンミンがご飯を作ってくれて(今回は買ってきたようだが)、一緒に食べて、コーヒーを俺がお返しにいれてやって、昨夜は、遅くなりましたから泊めてくださいと言って、うちに泊まっていった。

こうして説明すると、和やかな時間を過ごしているようにも思えるが、異様な緊張感を感じてるのは俺だけか。

いったいどうしたんだ、
性格変わってないか。

二年間ほとんど連絡くれなかったのに、
寂しがってんのは兄貴だけかと思ってたのに、
兄貴分なんて、うっとおしいだけなんだろうと思っていたのに、


「ユノ、」
「おお」
「今日は、」
「うん」

「あとでにします」
「なんだよ」
「いや、」
「はっきり言えよ!」
緊張感に堪えられないよ!
俺、なんか悪いことしたか?

したか?
したのかな?????

ふっと、チャンミンが鼻から息を漏らすように笑って、制服のネクタイの結び目に指を入れて弛め、流し目でちろっとこっちを見て、
なんか、
「ジェウオンさんに、聞きましたか?」
「な、なに」
「あのこ、」
「あ、ああ」
モモのことをチャンミンが言い出したのは、あの夜以来で、どきっとする。
「俺のこと、死んでると思ってたんですって」
「は?」
まあ死んでるってのは何を勘違いしてのか、て感じだけど、韓国語の翻訳サイトでそう書いてあったんですって。
とにかく、うちの事務所にもう、いないと思ってたんですって。
兵役でいない、てのがわからなかったのかな、だから、俺の代わりに、
「あ、それずっと言ってたな、モモ」
「モモ...」
「モモ、くん」
「…だから、ユノの隣に自分がいてもいいんじゃないか、って、思ったんだそうです。そう言ってるらしいですよ、サンフンさんに」

ユノ先輩は、恩人です、
すごい人です、て、

全然あきらめてないって。

「は…」
諦めないとか、またそういう冗談にして、あいつらほんとにたちの悪い、
「あれから考えたんですけど、」
チャンミンが淡々と話し続ける。
チッカ、チッカと点滅するウインカーと同じテンポで指でトントントンとハンドルをノックする。
運転してるのをほとんど見たことがないから、冷静なのか、イラついてるのか、判断がつかない。俺なら、こういう態度をとったら、イライラしてる。
「あれから、あの場であったことを何度も思い返したんですけど」
思い出さないでくれ、
「ユノ、モモってこが俺にそっくりだから、抵抗しなかったんじゃないかな、って」
「え!」
「あ、いっちゃった」
ぺろっと唇を舐めたチャンミンがまた流し目で、
「最後の切り札で言おうと思ってたのに」

車はもううちのマンションの目の前で、地下駐車場のスロープをなだらかに降りていき、入り口のいつものスタッフが挨拶してるのが目のはしに見えたけど、俺はチャンミンが何を言い出すのかと、ハラハラしてそれどころじゃない。




俺ねえ、
兵役入る前にね、
諦めようと思ったんです。

結構俺、アプローチしたのに、
ユノ、相手にしてくれなかったでしょう。

ユノにとっては俺はいつまでも、
家族で、弟でしょう。
なんともならないでしょう。

だからね、
こうして離ればなれになるのは、
神様がもう諦めろ、ていってんだと思って、
自分から連絡とるのやめよう、
あんたのことは、一回、
とにかく、頭を冷やそう、

といくら思っても、

苦しくて、
苦しくて、
そいで、あんたがたまに連絡くれると、
都合がつかないって言えばいいのに、
やっぱり、会いにいってしまう。

あんたが俺のこと、必要と思ってくれる、
少しは寂しがってくれるのかな、て
思ったら、

失恋してもさ、
相手にされてなくてもさ、
ずっと好きだった人のために、
もうちょい頑張ろうって思って、

そんな悲壮な覚悟でいたのに、
あんた、いきなり襲われてるし、
女、引っぱりこんでんならまだしも、って、

頭に血いのぼって、
あの男、殺してやろうかと思ったけど、

ねえ、








俺にだけは、てどういうこと?





サイドブレーキ引かれて、うちのスペースに車が停まって、チャンミンがこっちを向いて、俺はおもわず目を伏せた。チャンミンの視線を見返すことができない。こいつの動作がいちいち3D映像並みの立体感で迫ってくる。

なんで俺は、こんなに追い詰められてるんだろう。

「詳しいことは、部屋にいってから話しましょうか。」
「チャンミン。」

顔を上げると、チャンミンの顔がゆっくり近づいてきてるのに気づいて、チャンミンの大きな目がゆっくり半分くらい伏せて、むせかえるようにセクシーな顔立ちに幻惑されて、顎をすっと撫でられて、手を添えられて、チャンミンの顔が斜めに傾いで、
「あ」
唇がくっつくと、全身に針が刺さったような感覚で体がかっと熱くなり、俺はじっとしたまま、ただ動悸をありえないほど早めているだけ。

唇をちゅうっと吸われると、腹の底が上ずって、半開きになってた口の中にチャンミンの舌が滑り込んできて、おもわず目をつぶった。

酔っぱらってもいないのに。
さっき、部屋にいってからって、言ったじゃないか、と思うのに。

ていうか、さっき言ってた、
アプローチ、って何。

ゆっくり離れて、それでも目が寄ってしまうほどの至近距離で、

ほら、逃げない、て、
満足そうな顔をしたチャンミンなんて、
容赦がない。

そうなんだよ、こいつ、手加減てもんを知らないんだ。

チャンミンのシャツを握りしめていた手に気づいて引っ込めようとして、チャンミンの指に絡めとられる。

ごめん、モモ、
やっぱり、お前チャンミンに全然似てないよ。


なんて顔してんですか、
て、そんなの知るか。

車、降りられないじゃないですか、
て、また顔が近づいてきて、





お前だけが現実に思えるなんて
絶対言ってやらない、

とりあえず、今夜は。






Fin,maybe.










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COMMENT

チャンミン、カッコよすぎる。(喜)

2017/04/15 (Sat) 19:15 | 723621mam #- | URL | 編集 | 返信

コメントありがとござます!

スパダリ感追及してみましたてへ!

2017/04/15 (Sat) 21:56 | てふてふ #- | URL | 編集 | 返信

No title

一気に読み進めました。素晴らしいっ‼︎チャンミンがチャンミンらしいと思ったし、何ちゅ〜格好良さ‼︎‼︎素敵なお話をありがとうございました‼︎

2017/06/28 (Wed) 15:42 | あこ #K0X1s6ws | URL | 編集 | 返信

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